夫(30代)が大腸がん?!

家族が突然がんになったら

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(10)ぜんぜん知らない職場のひとに救われた話

これまでがんとは無縁だった人生が一転、
もっとも身近なひとががんになるという、うそみたいな状況。

入院・手術になるだろうと言われ、
すぐに夫と自分の職場の上司に連絡しましたが、まだその時は、がん宣告のショックから私も立ち直れていなくて、呆然としていました。

がんって何?なんでがん?
がんになったら死ぬんじゃないの?
なんで夫なの?
夫が死んだらどうしたらいいんだろ?

のエンドレスリピートで頭がいっぱいだった頃、思いもよらないところから救いの手が現れました。

今日はその話を書いていきます。
同じように不安しかない人にも、これを読んで元気になってもらえたらいいな~と思っています。

ぜんぜん知らない職場の人

私の上司にも夫のがんのことを話しましたが、
まだ到底、まわりの他の人にその状況を伝えられるほど、気持ちが落ち着いていなかった私。

誰かに話したい気持ちもあるけど、
勢いあまって泣いてしまったり、無用な心配をかけたり、暗い気持ちにさせてしまったら申し訳ない、という思いから、誰にも話していませんでした。

がん宣告の数日後のある日。

わりと大人数の職場だったので、
顔はみたことあるけどしゃべったことは無いとか、名前しか知らない、という人も多いのですが、
そんな中のある人と、休憩時間にたまたま初めて会話する機会がありました。

まだ気分が落ち込んでいた私は、
普段だったら見ず知らず(ではないけど)の人にこんな重い話はしませんが、
話の流れで「夫ががんになってしまって、近々退職する」と言ってしまったのです。

予想だにしなかったリアクション

え!そうなんですか・・・
まだお若いのに・・・それは大変ですね・・・
お大事になさってくださいね・・・

というふつうの会話で終わるだろうと思って言っただけだったのですが、
返ってきたリアクションは、想像をはるかに飛び越えたものでした。

「大丈夫ですよ、私もがんになって、抗がん剤もやって、
 今も生きてますから!(^0^)」

えーーーーーーーー?!ってなりました(笑)
あまりにもケロッとそんなことを仰るので、数秒フリーズしてしまいました。

その人は私よりすこし年上で、
体はふくよか(やつれてない)で、いたって元気そうだし、髪の毛もふさふさで、
私の「がん」とイメージとはあまりにもかけ離れた”健康的な姿”をしていました。

私が相当な無知だったのもあるのですが、
でもがんになって、抗がん剤治療も受けたとして、こんなに元気になるの?本当に?
と、衝撃を受けました。

たとえ手術が上手くいったとしても、
抗がん剤治療になったら体はやせ細って、髪は抜け落ちて、苦しい思いをして、
それで良くなったとしても、こんな元気そうな見た目になるとは思いもしなかったのです。

がん経験者は意外と多いということ

その人が教えてくれたのは、
「がんになった人は、あなたが知らないだけで、実はそこらじゅうにたくさんいる」ということでした。

がんになって死んでしまった場合、
「あの人はがんだったらしい」「あの人のお父さんはがんで亡くなったらしい」
という話題に否が応でもなるため「がん=死ぬ」と印象を持ちがちですが、

がんになって治った場合は、
初めて会った時や日常会話で、何も聞いてないのにいちいち「私、がんだったんですよ」と言う人は、ほとんどいないでしょ?

とその人は言いました。
また、そういうがん経験者が身近にたくさんいると知っていても、「がん」の話題がでない限りわざわざその話をしないでしょう、と。

たしかに、
そう言われてみればそうかも・・・と思いました。

今まで私は、がんと無縁の世界を生きてきたので知らなかっただけで、
世の中には思っているよりたくさん「がんを乗り越えた人」がいるのかもしれない。
というか、いるんだ。

そう思ったら、急に頭がスーーーーーーっとすっきりして、
なんだか重たかった体や顔の筋肉がすっごく軽くなったような感じがしました。

急に元気になって、
「絶望だけじゃなくて、希望も持っていいんだ!」みたいな前向きな気持ちになれました。

ほとんど何も知らない、初めて話したその人に、
こんなにも心が救われたんです。びっくりですよね。

がん経験者の輪と、それ以外の輪

その人は他にも、
こんな人やあんな人がいる、こんな治療をしてこんな風に過ごしている人がいる、
私の夫よりもずっと若い歳でがんになって、完治して結婚して子供を産んだ人もいる、
という話を聞かせてくれました。

今までそういう話をリアルで聞いたことがなかった私には、本当にありがたい、励みになる話でした。

そして思ったのは、

がんを経験した人同士にはつながり?輪?みたいなものがあって、
がんになった人のもとには、どんどんそういう「がんの経験」の話が集まってくる。

でも、がんと無縁で生きている人たちの輪の中には、
そういう話は、がんにならない限り入ってこないんだな~ということ。

自分や身近な人ががんを経験しないと、がんの話題なんてそうそうならないですもんね。

で、その別々の輪はなかなか交わることはなくて、
がん経験者のひとのもとにはどんどんそういう情報が増えていき、
がんと無縁な人のもとには、「あの人はがんで死んだ」という情報だけが入ってくる。

だから、がんになったときものすごく孤独に感じるし、
「がん=死ぬ」「なんで自分だけこんなことに・・・」という不安と絶望を抱えることになる。

私も夫もまさに、
なんで私たちだけこんな目に」みたいな感覚を少なからず持っていました。

それは、世間に同じようなひとが意外といっぱいいること、がんになって治って元気に生活しているひとも実はいっぱいいることを、
知らなかっただけだったんだ、と思うと本当に気持ちが楽になりました。

その人のおかげです。

一方、夫の職場でも

この日、その人と話したことで、
私はびっくりするくらい心が軽くなって、以前の記事にも書いた通り、
前向きに良い方に物事をとらえることができるようになり、夫をしっかり支えて励ますぞ!という気持ちを持てるようになりました。

で、夫にもこの話をして元気を出してもらいたかったのですが、
一方「がんになった本人にとっては、あんまり響かない話かもなぁ・・・」とも思いました。

「がん」と言われてほんの数日、まだ悪い方にしか考えられないだろうし、
「がんの治療を終えて元気に生きている人は意外とたくさんいるんだよ!」と言われても、「でも俺は違うかもしれない」と、嫌な気持ちにさせてしまうかも・・・

と思ってかなりふんわりやんわりと話したのですが、
案の定あんまり夫には響かなくて、「そうなんだぁ・・・」という感じでした。

しかし、その翌日か翌々日くらい。

仕事から帰ってきた夫はそれまでより少し元気な様子で、
こう言いました。

「やっぱり俺たちが知らなかっただけで、がんになった人って結構いるんだわ」

夫の職場では、上司が部署内で夫の病気について共有してくれたらしく、それは部署外の人の耳にも入っていったそうで、
普段あまり接することのないような人たちから、

「僕の家族もこんな感じ」
「実は僕も昔こんな手術をしたことがある」
「私の親も、こんな経験をしたんだよね」

と、がんの話題でたくさん話しかけられた、と言っていました。

改めて、自分たちが本当に世間知らずで無知だったんだな~と思いました。

職場だけでもこんなにいろんな人たちが、自分や身内のがんを経験していて、しかも悪い話ではなく希望の持てる話をたくさんしてくれたということに、本当に驚きました。

がんになった全ての人に知ってほしい

私たちの場合は、ただただ無知だったおかげで感動しただけかもしれません。
がんについてすでにある程度の知識がある方にとっては、なんの慰めにもならないかもしれません。

でも、私たちのように、がんと言われて孤独な感覚を持っている人がいたら、
この話で少しでも元気と希望を持ってもらえたらうれしいです。

何度も言いますが、
ほんとにこの出来事がなかったら、私はしっかり夫を励まして支えていけなかったかもしれません。
それくらい、本当に救われました。

希望を持つことは、とっても大切です。
もちろん直接こういう話をまわりの人から聞けたら一番いいですが、
そういう人がいなくても、この話を読んで、頭の隅に置いておいてほしいです。